平成16年12月3日
「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(中間報告)」に対する意見
全日本教職員連盟
今回、中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育特別委員会より中間報告された、「特別支援教育を推進するため制度の在り方」について、次の意見を今後検討されるよう強く望む。
○「特別支援学校(仮称)」には、教育部門を設置することを原則とする。
○「特別支援学校(仮称)」のセンター的な機能の充実のために、十分な教員配置を行う。
○固定式の特殊学級を存続させる。
以下に、理由を述べる。
1 特別支援教育の理念と基本的な考え方について
これまでの、「障害の種類や程度に応じて特別な場で指導すること」から、「児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導や必要な支援を行う」という理念と基本的な考え方は賛同できる。また、小・中学校において通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する指導及び支援の重要性について言及されたことは、現在学校現場において極めて大きな課題となっているところであり、大いに敬意を表したい。
2 盲・聾・養護学校制度の見直しについて
(1) 特別支援学校(仮称)の設置について
障害の重度・重複化に対応し、障害のある児童生徒ができる限り居住地域の身近な場で教育が受けられることを目指すために、可能な限り複数の障害に対応できる障害種別を超えた学校制度(「特別支援学校(仮称)」)に見直すことは理解できる。しかし、教育部門については、設置者に委ねるのではなく、教育部門を設けることを原則とすることが必要であると考える。それは、「盲・聾・養護学校の対象となる児童生徒の障害の特性から教育部門を設置することにより、障害種別のニーズに応じた教育課程を編成することや指導方法の充実を図ることが可能になり、教育効果が上がる」という現場教員の声があるからである。
また、障害のある児童生徒の能力を十分に発揮させ、進学・就職を含め生涯を見通した教育を行うために、より専門的な教育を行える学校を存続させる必要があるという観点から、特別支援学校(仮称)を障害種別の専門的指導を重点的に行える学校にしていくことも重要であると考える。
(2) 特別支援学校(仮称)のセンター的な機能について
特別支援学校(仮称)のセンター的な機能については、地域における特別支援教育 の推進のために必要である。ただし、現在、それぞれの盲・聾・養護学校において、 校内における指導や保護者への教育相談、周辺の学校に対する支援等を行っている現 状を考えると、この報告にあるようなセンター的な機能の充実を図るためには、十分 な教員の配置が必要不可欠である。
また、LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒は、現在、小・中学校の通常の学級に在籍しており、盲・聾・養護学校の教員の多くが、その特別な指導内容や指導方法を十分に把握していないのが実状である。これらの児童生徒に対する適切な指導や必要な支援を特別支援学校(仮称)に期待するためには、その専門性を持つ教員の養成・配置が重要となる。併せて、特別支援学校(仮称)の充実のためには、管理職も特別支援教育に対する十分な経験及び専門性を持ち、且つ適切なリーダーシップを発揮することが必要である。
3 小・中学校における制度的見直しについて
(1) 特別支援教室(仮称)の方向性について
先の協力者会議最終報告において、固定式の特殊学級(以下、「特殊学級」と示す)を廃止し特別支援教室(仮称)に転換する必要性が提言されているが、現在、多くの小・中学校においては、特殊学級を担当する教員と通常の学級を担当する教員の連携の下、特殊学級に在籍する児童生徒に対する適切な学習指導が行われていると同時に、通常の学級の児童生徒との交流の機会も保障されている。また、特殊学級を担当する教員が、通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する支援も行っている。
LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する適切な指導及び必要な支援は 喫緊の課題であり、LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する指導及び支 援のために、特別支援教室(仮称)を設けることは非常に有効であると考える。
(2) 特殊学級の必要性について
特殊学級に在籍する児童生徒の実態を考慮する中で、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習の必要性は十分に理解できる。しかし、そのことをもって特殊学級を廃止することにはつながらない。
特殊学級に在籍する児童生徒は、特殊学級の中で専門性ある教員の支援の下、一人一人の実態に応じた教育を受けることが必要である。通常の学級では十分な成果をあげることが困難な場合が多いという実態とともに、当該児童生徒の保護者の願いからも、特殊学級を別枠で設置することは必要であると考える。
(3) 環境整備と教職員の配置について
LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する教育と現在の特殊学級に在籍する児童生徒に対する教育の在り方の中で、児童生徒一人一人の実態に応じた教育を充実させるためには、就学指導や通級指導の在り方などをより深く議論する必要があると考える。
財政的に厳しいことは理解できるが、十分な教員の配置と、施設・設備や教材・教具の充実、学習の場の確保などがされなければ、期待される在り方が十分機能するとは考えられない。今後、このことが制度の中に具体的な形として組み込まれるよう検討されることを強く望む。
4 教員免許制度の見直しについて
特別支援学校(仮称)の教員には様々な障害に対する知識が必要であり、小・中学校の特別支援教育に携わる教員には特別支援教育に関する知識が必要であることは十分に理解できる。今後、免許取得段階での内容やその後の研修の必要性が十分に検討され、制度化されることを望む。ただし、特別支援学校(仮称)の教員が教育部門ごとの知識をすべて取得することは困難であると考えられるので、基本の部分と専門の部分を考慮することが望まれる。また、小・中学校の特別支援教育に関しては、学校全体で取り組むことを考えると、すべての教員が特別支援教育に対する基本的な知識を取得できるようにする制度(研修、人事交流等)の充実が望まれる。
5 関連する諸課題について
(1) 特別支援コーディネーターの充実について
小・中学校又は盲・聾・養護学校において、関係機関との連携協力の体制整備を図り、校内における特別支援教育の充実を図るためには、今後特別支援コーディネーターがその職務に専念できるよう配慮することが重要である。特別支援教育は学校全体で取り組むことによって成果が上がるものである。そのためには、特別支援コーディネーターがその中心となれるように、十分な研修の機会を確保するとともに、各学校において校務を軽減するなどの体制が必要になってくる。
(2) 一貫した特別支援教育の在り方について
LD・ADHD・高機能自閉症等の対応については、幼児段階での早期発見・早期支援から始まり、その子供たちの生涯を考えた支援を行う必要がある。そのために、幼稚園から小・中学校、そして高等学校におけるまでの一貫した特別支援教育の在り方を早急に検討することが望まれる。