平成18年4月18日
「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(最終報告)」に対する意見
全日本教職員連盟
1 はじめに
全日教連は「美しい日本人の心の育成」を基本理念として、教育専門職とし て次代を担う子供たちのために全力で教育実践に励んできた。そして、教育の 成果を上げるために自らの資質向上に取り組むとともに、教育諸条件の整備を 各方面に訴えてきたところである。
しかしながら、社会の急激な変化により、教育をめぐる問題は多岐にわたり、 その解決には国民全体で取り組まなければならない重要な問題であるという認 識が国民全体に広がっている。
ここに至っては、教育の根本理念を示す教育基本法の改正に着手し、これか ら先を見据えたより良いものにするとともに、教育問題は国民すべてにかかわ る重要な問題であることを明らかにしなければならないと考える。制定から半 世紀以上経過し、制定当時の社会状況とは大きく変化したこの21世紀の日本 において、現実を直視し、これからあるべき方向を示す教育基本法にすること は、私たち大人に課せられた責任である。
今回、「与党教育基本法改正に関する協議会」が3年の歳月をかけ、のべ70 回に及ぶ検討会を経て最終報告を取りまとめたことに対して、全日教連として は敬意を表するとともに、この最終報告を全体的に評価するものである。 将来の日本を背負って立つ子供たちの教育は、国の最重要課題である。その 意味において、政治的思惑が入ることなく、開かれた国民的議論を経て、純粋 に教育という観点から論じられ、真に「子供たちのためになる」法律となるこ とを望むものである。
2 内容について
(1)「国を愛する心」について
教育目標の中に「我が国と郷土を愛する心」が明記されたことは評価できる。 我が国には優れた伝統文化、そして、「美しい日本人の心」があったにもかかわ らず、戦後教育において、反省すべき点と引き続き生かしていくべき点が明確 にされなかった。このことにより、日本人のアイデンティティーが揺らぎ、日 本人としての誇りを見失ったかのような言動が見られるようになったことが、 今日の様々な社会問題の一因となっているとも思われる。「国を愛する心」は世 界中の全ての人が共通に持つ大切な価値観の一つであると考える。
(2)教育の機会均等について
特別支援教育の充実が求められている中で、今回「障害のある者」が十分な 教育を受けられるように明記されたことは評価できる。今後は障害種にかかわ らず、軽度発達障害をはじめとする全ての「障害のある者」に適切な教育がな されることが必要である。
(3)規律について
学校教育の条項に「規律を重んずる」が入ったことは評価できる。現在の学 校のいわゆる「荒れ」といわれる状況は、過度の人権意識にその一因があると 思われる。教育は、教員による指導に委ねられているという意味で「強制」を 伴う側面もある。従って、教える側と教えられる側の関係において規律は必要 であり、それなくしては正常な教育の成立は困難である。
(4)教員の身分の尊重について
教員の身分が明示されたことは評価できる。教員は高い専門性を有する教育 専門職である。教える側にあるものとして、教育技術の向上はもとより、自ら の人格向上についても必要であり、社会からの信頼と尊敬なくしては成り立た ない職業である。そのための「研究と修養」が求められるのは当然であり、そ れを行い得る者がその身分を尊重されるべきであると考える。
また、養成と研修の充実が明記されたことによって、今後、教育専門職とし てのインセンティブを持たせる改革が必要となってくると考える。
(5)家庭教育について
今回新たに「家庭教育」が盛り込まれたことは評価できる。子供は親からの 温かな愛情ときめ細やかな保護を受けながら成長するのであり、家庭における 教育は、その子供の人格形成に極めて大きな影響を与える。この事実により、 家庭が子供に対する教育の第一義的責任を負っているのである。今後さらに家 庭の教育力を高めなければならない。
(6)幼児期の教育について
幼児期の教育の重要性が明記されたことは評価できる。「生涯にわたる人格形 成の基礎を培う重要なものである」との文言は十分共感できる。ただし、理念 に終わることなく、幼児の健やかな成長が確実になされるような環境づくりと、 親としての自覚を促す施策がなされなければならない。
(7)学校、家庭及び地域住民等との連携協力について
教育は学校教育のみで完結するものではないことは明白である。現在、家庭 や地域等との相互連携に基づいて、子供を見守り育てていくことが強く求めら れている。これらの相互連携が明記されたことは評価できる。
(8)国および地方公共団体の財政上の責任について
今回、「国および地方公共団体の財政上の責任」が新たに加えられたことは評 価できる。義務教育費国庫負担制度をはじめとして、教育における財政的責任 が、国および地方公共団体にあることは、教育の機会均等、水準の維持向上を 保障する上で当然なことである。教育には大きな財政支出を伴うとはいえ、国 民一人一人に保障されるべき基本的人権の一つである。
(9)教育振興基本計画について
教育振興基本計画を策定する必要性が明記されたことは評価できる。教育は 財政上の責任はもとより、国が責任を持って行うべき重要な営みである。教育 の成果が確実なものとなるためには理念だけでなく計画と実行、そして評価が 必要である。同計画によって、教育基本法の理念が実現されるものと確信する。
3 最後に
教育基本法は教育に関わる根本法である。今回の最終報告を契機としてさらに大きな国民的議論が起こり、一日も早い法改正がなされることを強く望むものである。