平成16年5月31日
 
「義務教育費に係る経費負担の在り方について(中間報告)」に対する意見
 
全日本教職員連盟 
 
 
 今回、中央教育審議会初等中等教育分科会教育行財政部会教育条件に関する作業部会より中間報告された、義務教育費に係わる経費負担の在り方について、全日教連としては、その内容に大いに賛同する。その理由を以下に示す。
 
1 義務教育の意義と国の責任
 
 義務教育の意義は、必要最小限度の教育を保障することによって、未来を担う子供たちの個性や能力を伸ばし、人格を育成することである。憲法26条にも、教育を受ける権利が明記されており、義務教育に関しては、国が責任を果たすべきものである。
 そのため、国は義務教育のねらいを達成するための条件整備のうち、優秀な教職員の確保することを最優先させなければならない。学校事務職員及び学校栄養職員についても、子供たちの教育のために必要不可欠な職員として確保することが重要である。
 中間報告には、このような義務教育の意義と国の責任、及び教職員の重要性が明記されている。
 
2 義務教育費国庫負担制度の必要性と同制度廃止に伴う危惧
 
 義務教育費国庫負担制度は、都道府県の財政力の差にかかわらず、全国すべての地域に必要な教職員を配置し、どの都道府県の子供たちにも教育の機会均等を保障してきた。また、財源を確保することにより、優秀な教職員をどの地域にも配置することが可能になり、教育水準を維持・向上させてきた。
 もし、同制度が廃止されると、財政力の弱い地方自治体においては、必要な教職員数の確保をできなくなることが十分に予想される。そして、へき地の学校の統廃合が加速することや、少人数指導など子供たち一人一人に対するきめ細かい指導ができなくなることが生じ、その結果、地域によって教育水準の格差が出てくる可能性もある。
 中間報告では、同制度の必要性を、教職員の人材確保や地域間格差の是正など、6つの観点から説明し、一般財源化した場合に生じる問題点も多岐にわたって予想している。
 
 この他にも、義務教育における教育条件や義務教育費負担制度の国際比較及びその沿革などの観点から、その必要性や廃止することの危険性を、教育現場の実情を踏まえながら、論理的に述べられていることは、教職員の立場からも共感を得るものである。
 
 全日教連は、現在、目の前にいる子供たちだけでなく、将来の子供たちのためにも、国が教育に責任を持つことは当然であると考える。時代の変化に伴い、制度の在り方を見直すことは必要であるが、国が教育にかかわる最低限の責任を持つという根幹は維持すべきである。もし、今、財政の立て直しの立場から、義務教育費国庫負担制度の一般財源化が行われると、教育の機会均等、教育水準の維持・向上を担保するものがなくなり、義務教育に対して国が責任を放棄したことになる。日本は、これまでに、世界に名高い義務教育の制度を確立し、その成果をあげている。このような制度は、今後も守り続け、維持していくことが重要であると考える。
 地方の活力を生み出すための地方分権は必要であり、そのための三位一体改革も、その主旨は理解できるところである。しかし、国のなすべきことと地方のなすべきことを十分に峻別することなく、すべてを地方分権の流れのまま様々な権限が移譲し、地方にまかせてしまうことは、国の行く末を誤ることになる。現在、平成16年度から取り入れられた総額裁量制によって、国が財政的な裏付けをし、地方がその独自性を発揮でできる土台がつくられたところである。学級編制や教職員定数の弾力化は今まで以上に可能になり、実質的には地方の自由を束縛するものはなくなったといってよい。今後、現制度の中で教育を進め、その中で、さらに子供たちのためになるよう、制度の見直しをしていくべきである。
 
 全日教連に集う会員は、現在の制度の中でも、自由で独創的な教育活動を推進している。それは、国が義務教育費国庫負担制度によって、教育現場が財政に影響されることのないように保障してくれているからである。今後も、国がこの制度を堅持していくことを、全会員が切に願っている。
 
 中央教育審議会初等中等教育分科会教育行財政部会教育条件に関する作業部会においては、今後も義務教育費国庫負担制度の必要性等について検討を重ねていただき、その意見を、教育関係者だけでなく、各都道府県・市町村の行財政担当や、特に保護者に対して広げていくことを、全日教連としては強く望むところである。