全日本教職員連盟

第2回:虐待を受けた児童を支援する / 研修部長 増沢 高

児童虐待の程度には幅があるが、幼少期から不適切な環境下におかれ続けた児童の場合、人格の基盤となる乳幼児期の心的発達が未熟なまま就学年齢に至っている場合が少なくない。具体的な問題としては、周囲に対する安心感や信頼の感覚が抱けず、不信や恐怖心に満ちている、過度の警戒感があって休み時間など刺激の多い場面では落ち着きを失う、養育者との愛着形成が未確立で大人への適切な求め方や関わり方ができない、しつけが不充分で、食事、排せつ、身辺整理など基本的生活スキルが拙い、衝動や感情の調整が困難で、いったん感情を乱せば鎮静するのに時間がかかる、対人関係や集団活動ではトラブルに至りやすいなどである。このため学習への取り組みや仲間作りなど年齢相応の学校での課題に取り組むことが難しく、不適切な言動も多いため周囲から疎まれやすい。

 こうした児童には、不適切な行動を修正し、積み残した心的発達課題の再獲得を目指した支援が必要となる。日本の制度として支援の形態には2つがある。一つは児童相談所の判断で子どもを家族のもとから離し、児童福祉施設等に措置する場合で、社会的養護と呼ばれる形態である。中心となる施設は児童養護施設で、全国に約560か所が点在している。入所児童のほとんどはその学区の学校に通学することになる。もう一つは、子どもを家庭に残しての在宅支援である。児童相談所が扱う虐待ケースの内、社会的養護ケースは約1割で、在宅支援ケースが残りの9割を占める。在宅支援の場合、地域の複数機関が協働して支援にあたることになる。こうした協働の枠組みを要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)という。市町村の事務局を中心に、保育園、幼稚園、学校、医療機関、福祉事務所等、支援に必要な複数機関によって構成されている。社会的養護でも在宅支援でも学校は重要な役割を担っている。学校は家庭や施設に次いで長い時間を過ごす場所である。学校が子どもの回復と成長を補償する役割を担い得るかどうかは、子どもの将来を左右するほどに重要となる。まず必要なことは、関係する諸機関との連携のもと、個々の子どもの問題行動や症状の背景を検討、理解し、子どもが安心して生活できるよう学校環境を整えることである。学校給食の時間が唯一の健康的な食事場面となる子どももいる。トラブルの多い休み時間に担任教師の傍らで過ごすだけで安定する子どももいる。教師の適切な理解と心配りは、教師との信頼関係が深まる契機となる。こうした信頼関係を基盤に、遅れがちな学力の向上と共に、年齢相応の生活スキルや対人スキルの獲得を目指した指導をスモールステップで計画し、根気強く支援していくことが重要となる。


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