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阪根 健二

保護者からのクレームsakane.JPG

鳴門教育大学大学院教授
阪根 健二

第1回(全3回)
「愛とロマンでは解決しない」
保護者からクレームがあった場合、しっかり話を聞いて、不満さえ吐き出せば、保護者も落ち着くと言われる。また、誠意さえ見せれば、何とかなるものだとも言う。確かにその通りである。しかし、それだけで本当に解決するだろうか。
保護者対応に造詣が深い大阪大学教授の小野田正利氏と、保護者対応について話し合ったことがある。その際に、ある点で一致した。それは「愛とロマンでは解決しない」ということである。
そもそも教員は、愛とロマンを求めて、この職に就いた人が多い。したがって、誠意さえみせれば、いつかは解決するという考えは、どの教員にもあろう。ところが一向に解決せず、教員という職を去った方も少なくないのである。
実際にトラブルに対して、教員は真摯に受け止め、誠意を見せれば、百人中九十九人の保護者は納得するだろう。しかし、残り一人はどう対応しようとも、決して納得しないということを肝に銘ずる必要があろう。それが、無理難題の要求を続ける、いわゆる「モンスターペアレンツ」なのである。
 その対応法ははっきりしている。それは、「理性的な対応」なのである。出来ることと出来ないことをしっかりと説明し、それを理知的に説明することである。そこで感情的に迫られた場合、第三者を入れ、いずれが正しいか判断してもらうことである。もし、暴力や脅しがあれば、躊躇なく、警察等の関係?機関に協力を求める姿勢も必要である。
 もう少し詳しく説明しよう。まずは、保護者が何に対して怒りがあるのか、何が言いたいのかを整理して、事実関係を確認することである。ここさえはっきりすれば、帰着点も分かる。しかし、出来ないこともあろう。その場合、なぜ出来ないのか、しっかりと説明することが重要である。その理由付けが理性的な対応なのである。ただ、決して無味乾燥的な言い方ではうまくいかない。お役所仕事と言われるのが、せきの山である。それこそ、誠意をもって説明することである。
 もし、そこで脅迫や恐喝によって、学校の業務に支障が出れば、為計業務妨害という犯罪に該当することを意識して、毅然と対応すればいい。暴力等は論外である。警察等の関係?機関と連携し、しっかりと姿勢を示せばいいのである。ともあれ、学校全体の問題として、毅然とした対応をすることを伝えれば、意外に理解(納得)してくれる保護者も多いようである。

第2回
「システム化する対応策」
 保護者からのクレームは、その多くは担任に向かってくる。保護者にとって、窓口が担任であるのは自然なことであり、それは担任の職務の一つなのだが、最終的には学校全体に波及していくのが一般的であろう。そこで混乱すればするほど、初期対応に問題があるとして、責任のほとんどが、担任にかかってしまうため、孤軍奮闘という残念な形になるのである。
 では、どうすれば良いのだろうか。総じて言えば、「 抱え込まない」 ということだ。しかし、担任も抱え込みたくないにも関わらず、抱え込んでしまうのが実態である。つまり、システムが一貫していないことが問題といえよう。そこで、以下の提案をしておきたい。
? 記録のシステム化
 クレームが来れば、それを「 記録する用紙」 を統一化し、そこに「 決裁のような欄」 を作っておきたい。仮に担任が受ければ、それを記録し、まずは、学年主任や生徒指導主事に報告することが多いが、こうした様式に記録することで、各担当がそこに加筆しながら、管理職に上げていくというシステムが理想である。これなら、事案の経緯も分かるし、仮に理不尽な要求であるならば、その理不尽さも時系列で記録され、裁判等に発展しても対応できるのである。実際は、ほとんど記録されず、トラブルが大きくなってから、掘り起こすことが多いのである。
? 対応のシステム化
 クレームを受けた担任は、誰に相談するのかという「 フローチャート」 が必要だろう。責任は報告すれば"軽減"されるというシステム化である。どんな場合でも、管理職は最終的な責任者であり、傷口が大きくならない前に対応したいはずである。
? 窓口のシステム化
 そもそも、学校にはお客様相談室等ない。一般企業は、広報担当がいれば、相談対応の部署もある。それが企業の危機管理である。しかし、学校はそうはいかない。特に、小規模化した学校では、教頭にその任がかかってくるのが通例であろう。それならば、いっその事、担任が受けた相談を、内容によって、そのまま教頭に移せる「 窓口システム」 があっても良い。事前に保護者に話しておけば、何ら問題はないのである。
 こうしたシステム化は、学校文化に馴染みにくいが、担任が抱え込み、悩むという実態から考えれば、必要なことである。一度、学校内で考えてみられることをお勧めしたい。

第3回
「有言実行のススメ」
 日本の文化では、「不言実行」という理念が根強くある。"親の背中をみて子供が育つ"とも言われ、謙譲の美徳は特に好まれ、ビックマウスといわれる有言的な行動は、あまり推奨されない。
 これまでは、黙々とまじめに職務をこなせば、周囲の理解は深まると思われていた。しかし、今はそうはいかない。黙っていては、理解されないのである。実は保護者対応の在り方も同じである。ただ、教員は自らの実績を誇示しない傾向が強いため、仕事をばりばりこなすと、「あなたの後の人が困る」という言葉が聞かれるほど保守的である。これは個人の問題ではなく、組織上の問題ではあるが、個業性の課題がそこに現れている。
 こう考えると、保護者対応において、「説明責任」が重要であると理解していただきたい。そもそも「説明責任」は、影響力のある側が受ける側に説明する責務があるということであり、いわゆる権力側に課せられた義務と言っても過言ではない。例えば、学校の方針に変更があれば、積極的にその内容を公開し、それを受け止めてもらう努力が欠かせないのである。
 これは学級においても同じであり、保護者の理解を得ないまま、何かを実行すると、誰かからクレームがあると思えばいい。たいしたことはないと思っても、保護者にとっては一大事ということもあり得るのだ。教員と同じ意識をもっていると思っていると、落とし穴がある。
 では、どうすれば良いのだろうか。もし、今までと違う指導に至る場合、なぜそうするのかということを説明できるようにしておきたい。これは書面でなくても、納得できる理論させ押さえておけばいい。
 事前に手を打つこともお勧めしたい。Webでも、書面でも、あるいは説明会でもいいので、理由を語り、場合によっては、保護者に協力を得るという手立てを組んでおきたい。手間はかかるが、こうした手間が、その後の面倒を回避できるものといえよう。「有言実行」こそが、今の時代の保護者対応なのである。
 最後に、学級通信や連絡帳を頻繁に活用されている先生方は、その効果を実感されているだろう。その際に、管理職等に目を通してもらっておくと、トラブルを回避できよう。「責任の分散」という考え方である。管理職に見せるとややこしいとか、許可を得られないとして、そこを飛ばしていることもあろうが、実は管理職の意識と保護者の意識、視点として酷似していることが多い。このフィルターを通過しない場合は、クレームの根源になるかも知れないと思うべきだろう。
(全日教連教育新聞 平成27年2月号?4月号に掲載)

プロフィール
阪根 健二(さかね けんじ)
兵庫県神戸市生まれ。東京学芸大学大学院修了後、香川県の中学校に勤務。その後、香川県教育委員会指導主事、教頭、香川大学助教授を経て、現在、鳴門教育大学大学院教授。専門は、学校危機管理、生徒指導。なお、平成元年から五年間、香川県教職員連盟委員長(全日教連副委員長)を歴任している。


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