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石塚 謙二

インクルーシブ教育と授業のユニバーサルデザインishiduka.JPG
_障害者権利条約におけるインクルーシブ教育の理解_

豊能町教育委員会教育長
石塚 謙二

第1回(全3回)
 平成十八年に国連で採択された「障害者の権利に関する条約」が平成二十六年一月に批准され、効力を発している。国際条約締結に際しては、憲法は影響されないが、法律以下の法令を当該条約と矛盾がないようにする必要があることから、我が国は、締結に向けて関係法令の制定や改正を行ってきた。
 この条約では、教育に関しては、「インクルーシブ教育システム」の構築と「合理的配慮」の提供を求めている。例えば、平成二十三年八月には、障害者基本法が改正され、その第十六条には、「国及び地方公共団体は,障害者が,その年齢及び能力に応じ,かつ,その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため,可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ,教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない」と規定されている。本条項中の「可能な限り」は字義通り、できる限り行うことを求めており、合理的に説明できる理由なくして行為しないことは法令に抵触することに留意すべきである。
関連して用語の理解として考慮すべきこととして、まずは「インクルーシブ教育」と述べた場合は、それは包含する教育を意味することから、基本的には、障害のある子供と障害のない子供を同じ場で教育すること指すことになろう。しかし、障害のある子供の状態等や教育条件等により、常にその状態を保つことが困難であったり不適切であったりする場合もあり、「インクルーシブ教育」は、おそらく反論のない理念としたい。
一方、「インクルーシブ教育システム」と述べた場合は、理念を実現するための制度や仕組み等を指すことになろう。それらは、例えば、多様な学びの場の設定、弾力的な教育課程の設定、専門性のある教員等の配置、施設・設備の充実、包括性のある効果的な指導の提供、交流及び共同学習の充実、関連する教員研修の実施等であろう。
学校等においては、これらの意味や動向を見定め、着実にかつ実際的に障害等のある子供に応じていく必要があると考える。(次回は「基礎的環境整備」と「合理的配慮」)

第2回
今号では、インクルーシブ教育システム構築に向けた取組における「基礎的環境整備」と「合理的配慮」について述べる。
中教審初等中等教育分科会に置かれた特別委員会報告は、まずは、「 ?同じ場で共に学ぶことを追求するとともに,個別の教育的ニーズのある幼児児童生徒に対して,自立と社会参加を見据えて,その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる,多様で柔軟な仕組みを整備することが重要である。」と述べており、単に同一の場を提供することだけではなく、教育という観点が必要と読み取ることができよう。
また、同委員会は、『 障害のある子供に対する支援については,法令に基づき又は財政措置により,?教育環境の整備をそれぞれ行う。これらは,「合理的配慮」の基礎となる環境整備であり,それを「基礎的環境整備」と呼ぶこととする。』と述べており、「合理的配慮」を的確に行うための環境が重要としている。
「合理的配慮」については、同委員会は、『「障害のある子供が,他の子供と平等に 「教育を受ける権利」 を享有・行使することを確保するために,学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり,障害のある子供に対し,その状況に応じて,学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」 であり,「学校の設置者及び学校に対して,体制面,財政面において,均衡を失した又は過度の負担を課さないもの』と定義している。つまりは、「合理的配慮」については、障害のある子ども一人ひとりの状態等に応じて、均衡や負担などを十分に考慮しつつ、的確に提供することが重要であり、また、平成28年4月に施行される「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」によれば、そうした「合理的配慮」を提供しないことは差別と見なされることにも留意が必要である。
なお、同委員会におけるワーキンググループは、下記文科省HPにおいて「合理的配慮」の観点を示している。(次回は「授業のユニバーサルデザイン研究」。)

第3回
今号では、「従業のユニバーサルデザイン研究」について述べる。授業のユニバーサルデザイン化は、どの子も分かることを目指した授業の工夫であって、目的ではない。また、単に指導目標や指導内容のレベルを低下させることでもない。
1.学習指導要領に規定から
現行学習指導要領には、各教科等の指導においては,子どもが指導内容を確実に身に付けることができるよう,個別指導やグループ別指導,繰り返し指導,習熟の程度に応じた指導,興味・関心等に応じた課題学習,補充的な学習や発展的な学習などを取り入れ、指導方法や指導体制を工夫改善し,個に応じた指導の充実を図ることされており、どの子も分かることを当然ながら求めていることに留意が必要である。
2.「ユニバーサルデザイン」の基本的理解
 障害者の権利に関する条約においては、「ユニバーサルデザイン」について、「調整又は特別な設計を必要とすることなく,最大限可能な範囲ですべての人が使用することのできる製品,環境,計画及びサービスの設計をいう。」とされており、これを教育で言えば,個別的な調整又は特別な設計を必要とすることなく,最大限可能な範囲ですべての子どもがよく分かる教科教育等とされると考えられる。つまり、障害が有無だけでなく、どの子も分かるための最大限の工夫をすることと捉えたい。
3.授業のユニバーサルデザイン研究
授業のユニバーサルデザイン研究を進める際には、それが教科教育の研究であること、通常の学級での効果的な指導を追究すること、特別な支援が必要な子どもも可能な限り包括し,種々の工夫により,どの子もわかる授業を目指すこと、指導内容等の質的なレベルは下げないこと、特別支援教育の考え方や手法が生かすことなどを重視したい。
 実際には、まずは指導目標や指導内容を焦点化すること、次に身に付けるべき論理や知見を視覚化すること、さらに、その論理や知見を皆で共有化することを十分に行い、その上で必要に応じて個別の配慮を行うことを重視したい。こうした取組は、「インクルーシブ教育システム」の構築の一翼を担う取組であると銘記することが大切である。
(全日教連教育新聞 平成26年10月号?12月号に掲載)

プロフィール
石塚 謙二(いしづか けんじ)
北海道生まれ。千葉大学卒業後、千葉大学附属養護学校教諭、千葉県教育委員会指導主事、国立特別支援教育総合研究所研究室長、文部科学省特別支援教育調査官(この間東京学芸大学客員教授)等を経て、平成二十五年度から現職。特別支援教育支援士SV、授業のユニバーサルデザイン研究会副代表、日本LD学会代議員、日本発達障害学会理事・倫理委員会委員長。
〈著書〉
・『障害のある子どものための算数・数学』(編著 東洋館出版) 
・『気になる幼児の育て方』(編著 東洋館出版)
・『小学校特別支援学級指導用音楽CD』(監修日本コロンビア)等 

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