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七條 正典

「問題行動を起こす子供」の受け止めと対応shitijou.jpg

香川大学教育学部附属教育実践総合センター長
教授 七條正典

第1回(全3回)
 本稿では、学校現場で苦慮されている暴力行為やいじめ、不登校等様々な生徒指導上の「問題行動を起こす子供」への対応の在り方について考えていきたい。
 まず対応の前提として、教師の視点から子供の視点へと「子供理解」の視点を転換することである。「理解」は英語では「アンダースタンド」(下に立つ)である。つまり、自分の視点ではなく、相手(子供)の視点に立つことであり、そのことによって初めて真の理解も可能となる。
 「問題行動を起こす子供」の受け止めについても、教師の視点から見て「困った子」と見るか、子供の視点から見て「困っている子」と見るのかでは大きく異なる。前者であれば、教師の指示や指導に従わない「困った子」であり、叱責や注意の対象となる。後者であれば、心に悩みや課題を抱え「困っている子」であり、相談や支援の対象となる。つまり、「問題行動を起こす子供」の受け止め方次第でその対応が大きく異なることになる。
 次に、「問題行動を起こす子供」の何に対応するかである。
 その第一は「問題行動」そのものへの対応である。問題が起これば、その沈静化を図ることは生徒指導の対応として当然である。しかし、それはあくまで対症療法であり、根本的な解決とはなっていないことを押さえておく必要がある。
第二は、「問題行動」の背後にあるものへの対応である。「問題行動を起こす子ども」の背後には、その子の生育歴や置かれた環境、様々な人間関係等がある。その中のマイナス要因が彼らにストレスを与え、「問題行動」へと自己を表出させることにつながっている。しかし、これら背後にある問題への対応は、学校や教師だけでは限界があり、専門家や専門機関等との連携によるチーム対応の必要性を認識しておくことが重要である。
 第三は、「問題行動」を起こしている子供への対応である。ともすれば、その子を学級集団等から排除することによって問題を収束しようとする斥力が働くことがある。しかし、それは当該の集団から問題を取り除くことはできても、当該の子供の問題は解決していない。重要なことは、「問題行動」を起こしている子供の心のサインをキャッチし、そのニーズに応えることである。そして、当該の子供を学級集団の中に包み込み、他の子供と共に問題の解決を図るソーシャルインクルージョン(社会的包み込み)の視点を活用し、引力を働かせることである。

第2回
 周知の通り、生徒指導の最終のねらいは集団の中で生きる個人の育成であり、人格の発達的形成にある。そのことから、生徒指導の根幹は、子供の内面に働きかける指導、すなわち生き方指導であるとも言えよう。
 生徒指導というとどうしても「問題行動」への対応に軸足が置かれるが、前回も述べたように、生徒指導においては、問題行動そのものへの対応だけでなく、その背後にあるものや、問題を抱え悩み苦しんでいる当該の子供への対応がある。つまり、問題行動に適切に対応する(内面に働きかける)ためには、それを起こしている子供の内面理解(生育歴や環境因も含め)が前提となる。
 「問題行動を起こす子供」の内面理解を適切に行うための第一の視点は、愛と信頼に基づく教育的関係の成立である。そのために、教師は「傾聴・観察・伝達」を基本として子供と関わり子供理解に努める必要がある。つまり、子供と関わる際に、子供の心の声にしっかりと耳を傾け(傾聴)、子供の行動をよく観て内面の思いを察する(観察)とともに、自らの思いをしっかりと子供の心に届くよう伝える(伝達)ことにより、はじめて子供への確かな内面理解とより深い信頼関係の構築が可能となる。
第二は、多面的多角的な理解に努めることである。学校生活の様々な場面において、子供達は様々な姿を表出する。また家庭では家族に暴力をふるう子が、学校では無口で大人しかったりする。しかし、いずれもその子の姿である。様々な場面での姿を総合してその子の理解に努める必要がある。さらに、子供のある言動についても、教師によって見方が異なる場合がある。激しく動き回る姿を見て、ある教師は元気で活発な子と捉え、別の教師は落ち着きがない子と捉える。この見方の違いによって、その子への対応は大きく異なることになる。対応のばらつきは、子供に混乱をもたらす。したがって、多面的多角的な理解のためには、その子に関わる情報を関係者が共有し、その理解の共通化に努めることが求められる。
第三は、児童生徒理解の対象を豊かにすることである。その子に関する情報(性格や能力、興味、要求、悩み、交友関係、生育歴、環境条件等)は、その子の理解を深める上で重要な情報である。そして、その情報の有効活用は、問題を解決する糸口を得たり、その子との関わりを深めたりする上で重要な役割を果たす。したがって、当該の子供に関しての情報の対象を、質量ともに豊かにするよう努めることが求められる。

第3回
 問題行動を起こす子供への対応の在り方について、まず第一は、基準性の明確化(集団への指導)と規準性による柔軟な対応(個への指導)である。よく「ぶれない生徒指導」と言われる。教師によって、また状況によって対応が異なることは、その指導を受ける子供の中に不信感や不満をもたらし、指導が徹底せず、場合によっては荒れを増幅させることになる。一方、前回述べたように、一人一人の子供の問題行動の背景は異なっており、画一で硬直化した指導は、問題を抱えた子供の内面にはなかなか届かない。
 言うまでもなく、生徒指導をどのような基準で行うか、基準性を明確化し、それぞれの学校や学級集団全体に対して、その基準性に即した指導を行うことは重要である。しかし、その指導基準を全ての子供がすぐに具体化できるのであれば何の苦労もない。様々な悩みや課題を抱えた子供にとって、その基準性に到達するのは簡単ではない。だからと言って二重基準で対応することは、指導の一貫性を欠くことになる。そこで、個別の対応を要する子供に対しては、全体への指導として設定した基準に到達することに向けた規準性(ステップ)を設け、個の実態に即した柔軟な指導に配慮することである。その際、本人を取り巻く周囲の子供に対する指導(受容的態度や努力を認める好意的評価等)の在り方にも配慮する必要がある。
 第二は、「支える」ことから「育てる」ことへと、自立に向けた指導を展開することである。問題行動を起こす子供への対応として、受容し支えることは不可欠であるが、いつまでも支え続けることは不可能である。学校教育においては、その子の自立が図れるよう「育てる」視点を明確に持つ必要がある。道徳教育等での「自分づくり」、特別活動等での「仲間づくり」、そして、自らを集団や社会の中で生かすことのできる力を養う「集団づくり」、それらの基盤となる「学習力」等を育む、自立に向けた学びの場と機会の充実を図ることが求められる。このような教育課程の確実な実施は、現在「成長促進型生徒指導」として重視されている。
 第三は、チーム対応である。問題行動を起こす子供への対応として、一人一人の教師の個別の努力には限界がある。これからの生徒指導の在り方としては、抱え込むことなく、他の教師や関係機関の専門家等がチームとなってその対応に取り組むチーム支援の視点が重要となる。
 以上の視点を参考に、各学校における生徒指導の充実に期待したい。
(全日教連教育新聞 平成25年9月号?11月号に掲載)

プロフィール
七條 正典(しちじょう まさのり)
専門は道徳教育、生徒指導。文部科学省初等中等教育局教科調査官を経て現職。「心のノート」や「生徒指導提要」の作成に携わる。また香川県教育委員会と連携して「小学校問題行動等防止プログラム」(平成23年)の作成に取り組む。現在は、香川県教育センターと連携して学級経営力の向上に資する教員養成・研修のためのテキストの作成に取り組んでいる。
私たちも応援します。
株式会社イエローハット
相談役 鍵山 秀三郎

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