全日本教職員連盟

「全国的な学力調査の具体的な実施方法等について」(最終報告)に対する見解

全日本教職員連盟

1 はじめに

 国が義務教育の根幹について保障する責務があることを明快に示した昨年10月の中教審答申をもとに、今後も義務教育費国庫負担制度が堅持され、負担率の引き下げはあったものの、義務教育における機会均等や全国的な教育水準を維持向上させる条件は整えられた。この国庫負担制度の在り方をめぐる議論の中で、教育水準の維持向上に関して国際比較に基づくデータはあったものの、国内におけるデータが提出されることはなかった。このことによって、教育分野における様々な制度が教育水準にどのような影響を与えているか、という検証が十分になされないままに議論されてきたとも言える。
 今回、全国的な学力調査を行うことによって、教育における制度改革が適正に評価され、その改善に結びつけるようにされたことは、大変意義深いことである。その際、学力として測定可能な学力が教育の全体像を示すものではなく、その一部であることが十分に認識され、競争を煽るものではないと配慮しようとしていることは重要な視点であると考える。
 全日教連としては、学力調査の実施を契機として、学習意欲の向上につながる学習指導法の改善等、真に子供たちのためになる改革が確実に進むことを強く望むものである。以下、最終報告の内容について見解を述べる。

2 報告の内容について

(1)過度な競争にならないか

 学力についての国民の関心は高まっており、学力調査結果の公表についてはきわめて高い関心を呼ぶものと予想される。しかし、報道の在り方によっては、一人一人の子供の学習指導に活用する視点ではなく、単に学校間比較になる懸念が拭いきれない。今回示された一定規模での公表は妥当であると考える。ただし、市区町村や学校が地域や保護者に対する説明責任を果たすために自己の結果を公表することについては、序列化や過度な競争を煽らないようにするための細心の配慮が必要である。

(2)指導の改善に役立つものか

 学力調査という名前であっても、児童生徒にとってテストであることに変わりない。テストとは一定の学習のまとまりの終了時にどのくらいの学力が付いているかを計るものであり、児童生徒にとってその後の学習意欲に大きく影響を与えるものである。従って、学力調査の結果が個人個人に返却され、今後どのように学習に取り組むべきかという学習の方向性が示されるものになることが望ましい。行っただけのテストという思いで臨む場合と、自分の学力向上につながるという思いで臨む場合とでは、子供にとっての意味は大きく異なるので、教員の指導は重要である。
 また、複式学級に在籍する児童生徒の学力が低いという意見も聞かれることから、学校規模による学力との相関関係を分析し、相関が認められる場合には教員を加配する等の施策に活かすことが必要であると考える。同様に、免外教員の指導する学級についての学力との相関関係等、様々な観点からの分析を行うことが重要であると考える。

(3)子供と向き合う時間やゆとりを奪わないか

 教育課程実施状況調査は、その実施だけでなく処理までも教員が行うという点で、学校現場の負担は大きいものである。平成14年度の学習指導要領の改訂以後、総合的な学習の時間の導入や絶対評価の導入によって、教員は打ち合わせや準備に費やす時間が増え、また、評価等の書類作成に要する時間も急増し、大変多忙な勤務実態にある。そのため、新たに学力調査が加わっても、教師の多忙感をこれ以上増やさない工夫が必要である。
 なお、学校には各方面から内容の重複した調査が多数来ているという実態があることから、学力調査を行う際に、国と地方自治体が同様の調査を行うことがないようにすべきである。

(4)対象をどこまでにするか

 学力調査は子供のために行うという前提であることから、悉皆調査とすべきである。今回の学力調査導入の趣旨を生かすためには、対象から外れる学校や児童生徒があることは、一人一人の子供の指導に活用できなくなるということである。従って、学力調査の対象は全国すべての学校ならびにすべての児童生徒とすべきである。

3 最後に

 今回の最終報告において、全国的な学力調査を実施する具体的な方策が示された。このことによって、国が責任を持って義務教育を行うという崇高な理念を具体化する手段の一つが明らかにされた。今後は、学力調査の意義や目的が理解・徹底され、全国の学校現場において子供たちの学習意欲が向上し、「生きる力」を育む教育が真摯に取り組まれることを強く望むものである。
 また、報道関係者におかれては、学校現場は様々な子供によってクラス編成されていることや、都市、地方、塾の有無等、様々な条件の違いがあることを理解した上で、公表されたデータの分析を慎重に行い、報道されることを強く望みたい。


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相談役 鍵山 秀三郎

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